【和分差分学】このシグマ、解けますか?和分差分学という便利な道具

更新日時:2020/09/10

数学シグマ数列和分差分学問題回答

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前置き

プロローグ

どうも、安田です。
今回は「和分差分学」という少し聞き慣れない分野について、紹介のような意を込めて記事を書きます。 というのも、一か月ほど前駿台のエクストラ数学$\alpha$(映像授業)にお邪魔した時に講師の方が少し紹介していてとても便利だと感じたのが始まりです。
軽くどういう物かと言うと、「微分積分」の数列バージョンというイメージです。シンボル画像に載せた

\begin{equation} \sum_{k=1}^{n} \frac{k-1}{k(k+1)} 2^k \end{equation}

を和文差分を用いて解くことを本記事の目標とします。

和分差分の基本事項

まずは定義を示します。

和分 \begin{equation} \sum f(x) = \sum_{k=1}^{x-1} f(k) \end{equation} 差分 \begin{equation} \Delta f(x) = f(x+1) - f(x) \end{equation}

和分が$x-1$となるのは,和分差分をそれぞれ逆の存在として成り立たせるためです。すなわち

差分→和分の場合 \begin{eqnarray*} \sum \Delta f(x) &=& \sum_{k=1}^{x-1} (f(k+1) - f(k)) \\ &=& f(x) - f(1) \end{eqnarray*} 和分→差分の場合 \begin{eqnarray*} \Delta \sum f(x) &=& \Delta \left( \sum_{k=1}^{x-1} f(k) \right) \\ &=& \sum_{k=1}^{x} f(x) - \sum_{k=1}^{x-1} f(k) \\ &=& f(x) \end{eqnarray*}

といったように、微分積分のような形で相互に作用させると元の関数へと戻ります。
また、和分差分においても、積の微分法のようなものが使えます。結果から導出するほうが簡単ですが、やはり導出という事であるので、元の式から変形して導く事とします。

\begin{eqnarray*} \Delta\left(f(x)g(x)\right) &=& f(x+1)g(x+1) - f(x)g(x) \\ &=& f(x+1)g(x+1) - f(x)g(x+1) + f(x)g(x+1) - f(x)g(x) \\ &=& \Delta f(x) \cdot g(x+1) + f(x)\Delta g(x) \end{eqnarray*} $g(x+1) - g(x) = \Delta g(x)$ より $g(x+1) = g(x) + \Delta g(x)$ を代入すると \begin{eqnarray*} \Delta\left(f(x)g(x)\right) &=& \Delta f(x) \cdot \left( g(x) + \Delta g(x) \right) + f(x)\Delta g(x) \\ &=& \Delta f(x) \cdot g(x) + f(x) \Delta g(x) + \Delta f(x) \Delta g(x) \end{eqnarray*}

積の微分法の導出の似たような形で変形する事で導けました。
次はこの両辺を和分します。

\begin{eqnarray*} \sum \Delta \left(f(x)g(x)\right) &=& \sum \left( \Delta f(x) \cdot g(x) + f(x) \Delta g(x) + \Delta f(x) \Delta g(x) \right) \\ f(x)g(x) - f(1)g(1) &=& \sum \Delta f(x)\cdot g(x) + \sum f(x) \Delta g(x) + \sum \Delta f(x) \Delta g(x) \\ \sum f(x) \Delta g(x) &=& f(x)g(x) - f(1)g(1) - \sum \Delta f(x) \cdot g(x) - \sum \Delta f(x) \Delta g(x) \end{eqnarray*}

このように導く事が出来ました。
他にも公式はいろいろ導けますが、基本的な公式はこの程度かと思います。さらっと紹介してみましたが、いかがでしょうか。そこまで理解しがたいものではないですので、初見でも理解しやすいと思ったため文章量を減らしました。
以上、基本事項でした。

実用例

ではいつ使うのかという疑問を浮かんでいる方がいるかもしれませんので、そろそろ実例を示します。

今回は、よく見るが覚えられていない以下の問題を解きます。

\begin{equation} \sum_{k=1}^{n} kr^k \end{equation}

それでは問題を解きます。以下$k$を$x$に変えた形で書きます。

\begin{equation} S = \sum xr^x \end{equation} とする。 \begin{eqnarray*} S &=& \sum x\left\{r-(r-1)\right\}r^x \\ S &=& \sum x\left\{r^{x+1} - (r-1)r^x\right\} \\ S &=& \sum x\left(r^{x+1} - r^x\right) - (r-2)\sum xr^x \\ S &=& \sum x\Delta r^x - (r-2)S \\ (r-1)S &=& xr^x - r - \sum \Delta x \cdot r^x - \sum \Delta x \Delta r^x \\ (r-1)S &=& xr^x - r - \sum r^x - \sum \Delta r^x \\ (r-1)S &=& xr^x - r - \sum_{k=1}^{x-1}r^k - (r^x - r) \\ (r-1)S &=& xr^x - r^x - \frac{r^x - r}{r-1} \\ (r-1)S &=& \frac{(x-1)r^{x+1} - xr^x + r}{r-1} \\ S &=& \frac{(x-1)r^{x+1} - xr^x + r}{(r-1)^2} \end{eqnarray*} よって、 \begin{equation} \sum_{k=1}^{x-1}kr^k = \frac{(x-1)r^{x+1} - xr^x + r}{(r-1)^2} \end{equation} $x = n + 1$ を代入して、 \begin{equation} \sum_{k=1}^{n} kr^k = \frac{nr^{n+2} - (n+1)r^{n+1} + r}{(r-1)^2} \end{equation}

このように簡単に導く事が出来ました。
恐らく、この問題の最初に習った解法は閃きの部分が強いものであったと思いますが、和分差分の基本的な公式を使用するだけで、閃きが必要なく解くことができます。
実例は以上です。

問題の解法

それでは、最初に提示した問題を解きます。

[問題] \begin{equation} \sum_{k=1}^{n} \frac{k-1}{k(k+1)} 2^k \end{equation}

問題を発見をするための過程と、問題を出題され解答するための過程の2種類の解法で解きます。まずは前者から示します。

問題を発見するための過程 積の差分の公式を変形する。 \begin{eqnarray*} \Delta \left( f(x)g(x) \right) &=& \Delta f(x) \cdot g(x) + f(x) \Delta g(x) + \Delta f(x) \Delta g(x) \\ \Delta \left( f(x)g(x) \right) - f(x) \Delta g(x) &=& \Delta f(x) \cdot \left( g(x) + \Delta g(x) \right) \\ \Delta \left( f(x)g(x) \right) - f(x) \Delta g(x) &=& \Delta f(x) \cdot g(x+1) \\ \frac{ \Delta \left( f(x)g(x) \right) - f(x) \Delta g(x) }{g(x+1)} &=& \Delta f(x) \end{eqnarray*} 両辺を差分すれば、 \begin{equation} \sum \frac{ \Delta \left( f(x)g(x) \right) - f(x) \Delta g(x) }{g(x+1)} = f(x) - f(1) \end{equation} ここで、$F(x) = xf(x)$, $g(x) = x$ とすると、$\Delta g(x) = 1$ なので \begin{eqnarray*} \sum \frac{ \Delta F(x) - \frac{F(x)}{x}}{x+1} &=& \frac{F(x)}{x} - F(1) \\ \sum \frac{ x\Delta F(x) - F(x)}{x(x+1)} &=& \frac{F(x)}{x} - F(1) \end{eqnarray*} よって、 \begin{equation} \sum_{k=1}^{x-1} \frac{k\Delta F(k) - F(k)}{k(k+1)} = \frac{F(x)}{x} - F(1) \end{equation} ここで、$x = n + 1$ を代入すると \begin{equation} \sum_{k=1}^{n} \frac{k\Delta F(k) - F(k)}{k(k+1)} = \frac{F(n+1)}{n+1} - F(1) \end{equation} $F(n) = 2^n$ とすると、$\Delta F(n) = 2^n$ なので \begin{equation} \sum_{k=1}^{n} \frac{k-1}{k(k+1)}2^k = \frac{2^{n+1}}{n+1} - 2 \end{equation}

このような形で私は発見しました。
しかし、この問題を出題された時の解法にこれが思いつくはずがありません。ここで、和分差分の考え方を用いた一般的な解法を示します。
和分可能という事は、中身が差分の形で表す事が出来るという事ですので、それを試みます。この時必要なのは、差分の形を構成するための$k+1$を作るという事です。

問題を出題され解答するための過程 \begin{eqnarray*} \sum_{k=1}^{n} \frac{k-1}{k(k+1)} 2^k &=& \sum_{k=1}^{n} \frac{k2^k - 2^k}{k(k+1)} \\ &=& \sum_{k=1}^{n} \frac{k\left(2^{k+1} - 2^k\right) - 2^k}{k(k+1)} \\ &=& \sum_{k=1}^{n} \frac{k2^{k+1} - (k+1)2^k}{k(k+1)} \\ &=& \sum_{k=1}^{n} \left( \frac{2^{k+1}}{k+1} - \frac{2^k}{k} \right) \\ &=& \frac{2^{n+1}}{n+1} - 2 \end{eqnarray*}

このように解けます。
和分差分学を学ぶとこのような考え方が補われそうですね。また、時間短縮をでき、ひらめきのようなセンスを問われるように見える問題でも、論理的な思考で答えを導く事ができます。
それでは、お疲れさまでした。

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