母関数と差分方程式 p1:差分を用いた母関数の変換

更新日時:2021/12/16

数学数列和分差分学母関数

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級数の紹介

どうも、安田です。

今回は、数列の母関数を$n$階差分の第1項に級数に変換する公式を発見しましたので、紹介します。 この記事は p1 というタイトルがついていますが、より一般化したものを発見したので、それを p2で書きます。

ネットをみていたら、結論を先に書いた方が良いという意見(このブログに対する意見ではないが)を見かけたので、最初に結論を載せることにしました。

母関数の変換
$(a_n)$を数列, $\Delta$を差分演算子($\Delta a_n = a_{n+1} - a_n$)とする。このとき$|x| \lt 1$かつ左辺の級数が収束するような$x$に対して \[ \sum_{n = 1}^{\infty}a_nx^n = \sum_{n = 1}^{\infty}\Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1 - x} \right)^n \] が成立する。

$x=-1$のときのこの変換は、級数の収束を非常に速くする変換で、オイラー変換と言うそうです。(教えてくれた方、ありがとうございます)

まず、この式が成立する簡単なイメージとともに発見の経緯を書きます。
いま、数列$a_n$について差分方程式(漸化式)から一般項を求めたいのですが、母関数を経由して求めることを考えます。 数列$a_n$の母関数$F_0(x)$は次のように定義されます。

\[ F_0 (x) = \sum_{n=1}^{\infty} a_n x^n \]

ここで、差分方程式を生かしたいので、$a_{n+1} = a_n + \Delta a_n$ を用いて級数を変形します。

\begin{align} F_0(x) &= \sum_{n=1}^{\infty} a_n x^n \\ &= a_1 x + x\sum_{n = 1}^{\infty} a_{n+1} x^n \\ &= a_1 x + x \left( \sum_{n = 1}^{\infty} a_n x^n + \sum_{n = 1}^{\infty} \Delta a_n x^n \right) \end{align}

ここで、$\Delta a_n$ の母関数が出てきたので、これを$F_1(x)$、すなわち \[ F_1(x) = \sum_{n = 1}^{\infty} \Delta a_n x^n \] とすれば

\begin{align} F_0(x) &= a_1 x + xF_0(x) + xF_1(x) \\ F_0(x) &= \frac{x}{1 - x} (a_1 + F_1(x)) \end{align}

となりました。ここで、次は$F_1$を求めたいので、同じような変形をすることを考えます。ここで \[ F_k(x) = \sum_{n=1}^{\infty} \Delta^k a_n x^n \] とすれば、先ほどの変形と同様に \[ F_k(x) = \frac{x}{1-x} (\Delta^k a_1 + F_{k+1}(x)) \] となります。これを$F_0$の式に代入し続ければ、 \[ F_0(x) = \sum_{n = 1}^{\infty}\Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1 - x} \right)^n \] が完成しそうなイメージが湧きますね。

厳密な証明

厳密な証明は上のようなやり方をすると、$k \to \infty$のときの$\Delta^k a_n$の冪級数と$(x/(1-x))^k$の積とかの判定をする必要がありますので、 おそらく証明が難しいです。(これがもし簡単だったら私の証明は無駄足になり、申し訳ないですね...。) だから、もう少し慎重に部分和を使って証明を行います。

その前に、今回使う命題を1つ上げておきます。

$|x| \lt 1$ に対して \[ \sum_{n = 0}^{\infty} {}_{n+k-1} C_n x^n = \left( \frac{1}{1-x} \right)^k \] が成立する。

これは負の二項定理というそうです。(教えてくれた方ありがとうございます。)今回は証明をしません。多分右辺をテイラー展開とかすればいけると思います。

それでは、これを使って証明をします。

$x$ は$ a_n$ の母関数の収束する範囲内にあるとする。 まず数列のテイラー展開(シフト級数の記事の正確な考察、という見出しの 下にある式を参照してください。) を用いて、展開する。 \begin{align} \sum_{n = 1}^{N} a_n x^n &= x\sum_{n=1}^{N}a_nx^{n-1} \\ &= x\sum_{n=1}^{N}\sum_{k=1}^{n} {}_{n-1} \mathrm{C}_{k-1} \Delta^{k-1} a_1 x^{n-1} \ (\because \text{テイラー展開})\\ &= x\sum_{k=1}^{N} \left( \Delta^{k-1} a_1 \sum_{n=k}^{N} {}_{n-1} \mathrm{C}_{k-1} x^{n-1} \right) \\ &= x\sum_{k=1}^{N} \left( \Delta^{k-1} a_1 \sum_{n=k}^{N} {}_{n-1} \mathrm{C}_{n-k} x^{n-1} \right) \end{align} $n - k$ を $n$ に置き換えれば \begin{align} \sum_{n = 1}^{N} a_n x^n &= x\sum_{k=1}^{N} \left( \Delta^{k-1} a_1 \sum_{n=0}^{N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_{n} x^{n+k-1} \right) \\ &= \sum_{k=1}^{N} \left( \Delta^{k-1} a_1 x^k \sum_{n=0}^{N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_{n} x^n \right) \end{align}

ということで、右辺に負の二項係数が使えそうな形が出てきました。あとは、これがしっかり収束してくれることを証明するだけです。

負の二項係数の収束を$\varepsilon\text{-}N$論法で記しておく。 \[ \forall \varepsilon \gt 0, \exists N \in \mathbb{N}, \forall M \in \mathbb{N}, M \geq N \Rightarrow \left\lvert\sum_{n=0}^{M} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^n - \left(\frac{1}{1 - x}\right)^k \right\rvert \lt \varepsilon \] 今、任意の$\varepsilon$とある$N$を定めたとする。 \begin{align} & \sum_{n=0}^{2N} a_n x^n - \sum_{n=0}^{N} \Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1-x}\right)^n \\ &=\sum_{k=0}^{2N} \left(\Delta^{k-1}a_1 x^k \left(\sum_{n=0}^{2N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^n - \left(\frac{1}{1-x}\right)^k\right) \right) \\ &\quad+\sum_{k=N+1}^{2N} \left(\Delta^{k-1} a_1 x^k \sum_{n=0}^{2N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^n \right) \end{align} だから、この右辺の第2項を移項して、絶対値をとって$\varepsilon\text{-}N$で記した不等式評価を用いれば \begin{align} \left\lvert \sum_{n=0}^{2N} a_n x^n - \sum_{n=0}^{N} \Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1-x}\right)^n - \sum_{k=N+1}^{2N} \left(\Delta^{k-1} a_1 x^k \sum_{n=0}^{2N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^n \right) \right\rvert \lt \left\lvert \sum_{k=0}^{N} \Delta^{k-1} a_1 x^k \right\rvert \varepsilon \end{align} となる。ここで、左辺の$\varepsilon$の係数となっている級数であるが、これは$a_n$の母関数が収束することから$a_n$の母関数の部分和が有界であることを用いれば、この級数も有界であることが簡単に示せる。
したがって \[ \lim_{N \to \infty} \left\lvert \sum_{n=0}^{2N} a_n x^n - \sum_{n=0}^{N} \Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1-x}\right)^n - \sum_{k=N+1}^{2N} \left(\Delta^{k-1} a_1 x^k \sum_{n=0}^{2N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^n \right) \right\rvert = 0 \] である。

$2N$ と $N$ で比較したのは、負の二項係数の部分の和が無限和になるような$k$が一定数欲しかったからです。
これでほとんど示せたのですが、余分な項がありますので、これが$0$になってくれれば証明完了です。

まず、次の数列 \[ T_N = \sum_{k=1}^{N} \left(\Delta^{k-1} a_1 x^k \sum_{n=0}^{N-k} {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^n \right) \] について考える。これは、 \begin{align} T_N &= \sum_{k=1}^{N} \sum_{n=0}^{N-k} \Delta^{k-1} a_1 {}_{n+k-1} \mathrm{C}_n x^{n+k} \\ &= \sum_{k=1}^{N} \sum_{n=k}^{N} \Delta^{k-1} a_1 {}_{n-1} \mathrm{C}_{n-k} x^n \\ &= \sum_{k=1}^{N} \sum_{n=k}^{N} \Delta^{k-1} a_1 {}_{n-1} \mathrm{C}_{k-1} x^n \\ &= \sum_{n=1}^{N} x^n \sum_{k=1}^{n} {}_{n-1} \mathrm{C}_{k-1} \Delta^{k-1} a_1 \\ &= \sum_{n=1}^{N} a_nx^n \end{align} であり、今$x$は$a_n$の母関数の収束する範囲内にあるから、$T_N$は収束列であり、よってコーシー列である。
ゆえに \[ \lim_{N \to \infty} (T_{2N} - T_N) = 0 \] である。これを先ほど求めた結論と組み合わせれば、 \[ \lim_{N \to \infty} \sum_{n=0}^{2N} a_n x^n = \lim_{N \to \infty} \sum_{n=0}^{N} \Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1-x}\right)^n \] であり(右辺の収束の証明は簡単なので省略)、すなわち \[ \sum_{n = 1}^{\infty}a_nx^n = \sum_{n = 1}^{\infty}\Delta^{n-1} a_1 \left(\frac{x}{1 - x} \right)^n \] が示された。

遠回りかもしれませんが、これが最初に思いついたので、この証明しか知りません。

応用

具体例:調和級数の母関数

具体的に何を求めるとときに使えるかという例として、調和級数の母関数の導出を示しておきます。

まず、数列$(a_n)$を$a_1 = 0$ \[ a_{n+1} = a_n + \frac{1}{n} \] と定めておきます。また、この母関数を$G(x)$とします。ここで、この数列の$m$階差分を考えるのですが、その前に一つ差分でよく使う階乗冪というものを紹介します。

階乗冪は次のように定義される。 \begin{equation} n^{\underline{m}} = \left\{ \begin{aligned} &\prod_{k=0}^{m-1} (n-k) & m \geq 1 \\ &1 & m = 0 \\ &\prod_{k=0}^{-m-1} \frac{1}{n+k} & m \leq -1 \end{aligned} \right. \end{equation} 階乗冪に関して、$m \neq 0$のとき次の等式が成立する。 \[ \Delta n^{\underline{m}} = m n^{\underline{m-1}} \]

ここで、この数列$m$階差分$(m \geq 1)$を考えます。$1$階差分が \[ \Delta a_n = \frac{1}{n} = n^{\underline{-1}} \] なので、あとはこれを$m-1$階差分すれば \[ \Delta^m a_n = (-1)^{m+1} (m-1)! n^{\underline{m}} \] です。ここで、今必要なのは$n=1$の値ですので、それを代入して \begin{align} \Delta^m a_1 = (-1)^{m+1} \frac{(m-1)!}{m!} = \frac{(-1)^{m+1}}{m} \end{align} となります。ゆえに、$\Delta^0 a_1 = 0$ に注意して母関数を変換すれば \[ G(x) = \frac{x}{1-x} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{n} \left( \frac{x}{1-x} \right)^n \] となります。ここで、$\ln x$ の $x = 1$ でのテイラー展開が \[ \ln (x + 1) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^n}{n} x^n \] であることを用いれば、(ここら辺の収束半径の話は大変そうなので省きます)

\begin{align} G(x) &= \frac{x}{1-x} \ln \left( \frac{x}{1-x} + 1\right) \\ &= \frac{x}{1-x} \ln \left(\frac{1}{1-x}\right) \end{align}

となります。ここで、調和級数 $H_n$ を \[ H_n = \sum_{k=1}^n \frac{1}{k} \] とすると、これは $a_{n+1} = H_n$ となっています。よって調和級数 $H_n$ の母関数 $F(x)$ は \[ G(x) = xF(x) \] です。これにより、$F(x)$ が求まります。

\[ F(x) = \frac{1}{1-x} \ln \frac{1}{1-x} \]

これで、調和級数は母関数を求めることができました。

シフト級数への応用

シフト級数の記事で示した、 シフト級数の一般形である多次元シフト級数というものに今回の母関数の変換を当てはめると、面白い等式を得ることができます。

まず、多次元シフト級数がどんなものかを書きます。

\[ \sum_{k_1 = 0}^{n} \sum_{k_2=0}^{k_1} \cdots \sum_{k_{2m} = 0}^{k_{2m-1}} \frac{(-1)^{k_1 + k_2 + \cdots + k_{2m}}\cdot n! \cdot f\left(x+\frac{p k_{2m}}{n}\right)}{(n-k_1)!(k_1-k_2)! \cdots (k_{2m-1}-k_{2m})!k_{2m}!} = f(x+p) \]

このままでは使い道がないので、$f(k) = a_k$ と変換して、$p = n-1$, $x=1$ とします。また、面倒なので和の範囲を簡単に書きます。

\[ a_n = \sum_{n \geq k_1 \geq \cdots \geq k_{2m+1} \geq 1} \frac{(-1)^{k_1 + k_2 + \cdots + k_{2m}}(n-1)!k_{2m+1}}{(n-k_1)!(k_1 - k_2)!\cdots(k_{2m} - k_{2m+1})!k_{2m+1}!} \Delta^{k_{2m+1} - 1}a_1 \]

この式は本来自明な式(右辺の\Deltaを展開して地道に計算すれば正しいことが証明できる式)なのですが、ここで$\Delta^k a_1$が母関数から計算できることがわかったので、非自明な式へと変形させることができます。 (すごい人からしたら自明かもしれませんが)

まず、$a_n$の母関数$F(x)$から$\Delta^{k-1}a_1$を抽出します。

\[ F(x) = \sum_{n=1}^{\infty} \Delta^{n-1}a_1 \left(\frac{x}{1-x}\right)^n \] だから \[ F\left(\frac{x}{1+x}\right) = \sum_{n=1}^{\infty} \Delta^{n-1} a_1 x^n \] であり、これを$n$階微分して$0$を代入すれば \begin{align} n! \Delta^{n-1} a_1 &= \left. \left(\frac{d}{dx}\right)^n F\left(\frac{x}{1+x}\right) \right\rvert_{x=0}\\ \Delta^{n-1} a_1 &= \left. \frac{1}{n!} \left(\frac{d}{dx}\right)^n F\left(\frac{x}{1+x} \right)\right\rvert_{x=0} \end{align} である。

あとはこれを多次元シフト級数に代入すれば完成します。そういうわけで、次の定理というのか等式というのか、が導けました。

数列 $(a_n)$ の母関数を $F(x)$ とすると、$m \geq 0$ を整数として \[ a_n = \left. \sum_{n \geq k_1 \geq \cdots \geq k_{2m+1} \geq 1} \frac{(-1)^{k_1 + k_2 + \cdots + k_{2m}}(n-1)!k_{2m+1}}{(n-k_1)!(k_1 - k_2)!\cdots(k_{2m} - k_{2m+1})!k_{2m+1}!^2} \left(\frac{d}{dx}\right)^{k_{2m+1}} F\left(\frac{x}{1+x}\right)\right\rvert_{x=0} \] が成立する。

自分で導出しておいてなんですが、何に使い道があるのでしょうか、しかし、今回は役に立たないと思っていたシフト級数が役に立ってくれましたので、同じようにいつか使い道が現れてくれることを祈ります。

今回は以上にしようと思います。それでは、お疲れ様でした。

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