arctanに関するロマンある不等式

更新日時:2020/08/15

数学arctan関数不等式コーシー・シュワルツの不等式

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はじめに

$\arctan$などについて

$\arctan(x)$, $\ln(x)$ は高校数学の学習範囲から少し外れていますので、一応定義を示しておきます。

$\arctan(x)$ は $\tan(x)$ の逆関数です。 \begin{equation} \arctan(x) = \tan^{-1}(x) \end{equation} $\ln(x)$ は自然対数 $\log_e(x)$ です。 \begin{equation} \ln(x) = \log_e(x) ( = \log(x)) \end{equation}

今回は$ -\frac{\pi}{2} \leqq \arctan(x) \leqq \frac{\pi}{2}$ の一価関数として扱う。

プロローグ

どうも、安田です。
今回は、シンボル画像?サムネイル画像?に載せた謎の不等式を求めます。
最近コーシー・シュワルツの不等式を扱ったことがあり、その時この不等式を発見し、有用性はないですがロマンはあるのでこの記事を書くこととしました。
また貼っておきます。

これを不等式$(\alpha)$としておく $x \geqq 0$ の時 \begin{equation} \arctan(x) \geqq \frac{1}{\displaystyle \sum_{n=0}^{m}\frac{\left(\ln\left(x+\sqrt{x^{2}+1}\right)\right)^{\left(2n-1\right)}}{\left(2n+1\right)!}} \end{equation} $x \leqq 0$ の時 \begin{equation} \arctan(x) \leqq \frac{1}{\displaystyle \sum_{n=0}^{m}\frac{\left(\ln\left(x+\sqrt{x^{2}+1}\right)\right)^{\left(2n-1\right)}}{\left(2n+1\right)!}} \end{equation}

導出

コーシー・シュワルツの不等式

まずはコーシー・シュワルツについてを書いておきます。
シグマの形の方が良く知られているとは思います。本記事においては積分の方のみを示しておく事とします。

\begin{equation} \left(\int_{a}^{b} f(x)^2dx \right)\left( \int_{a}^{b} g(x)^2dx \right) \geqq \left( \int_{a}^{b} f(x)g(x)dx \right)^2 \end{equation}

証明に関しては、有名ですが以下の方法を用います。

\begin{equation} \int_{a}^{b} \left( f(x)k - g(x) \right)^2 dx = 0 \end{equation} この解$k$の個数は、$f(x)$ が $g(x)$ の定数倍である時1つ、定数倍で無い時0つなので、判別式$D \leqq 0$である。

あとは判別式を変形するだけですので省きます。

今回は$f(x)$に$\sqrt{f(x)}$を$g(x)$を$\frac{1}{\sqrt{f(x)}}$としたものを用います。すなわち以下の式です。

\begin{eqnarray*} \left(\int_{a}^{b} f(x)dx \right)\left( \int_{a}^{b} \frac{1}{f(x)}dx \right) &\geqq& \left( \int_{a}^{b}dx \right)^2 \\ \int_{a}^{b} \frac{1}{f(x)}dx &\geqq& \frac{(b-a)^2}{\displaystyle \int_{a}^{b} f(x)dx} \end{eqnarray*} ※積分が負となる場合は不等号も逆向きになります。

不等式$(\alpha)$の導出

本題となりましたが、$\arctan(x)$の積分表示の一種を変形して$(\alpha)$の形へ持っていきます。
まずは積分表示を求めます。

まず、以下の積分を考える。 \begin{equation} \int_{0}^{x} \frac{1}{t^2+1} dt \end{equation} $t = \tan(u)$ とおくと、 \begin{equation} \begin{cases} u : 0 \to \arctan(x) \\ dt = \frac{1}{\cos^2(u)}du = (\tan^2(u) + 1)du \end{cases} \end{equation} よって、 \begin{eqnarray*} \int_{0}^{x} \frac{1}{t^2 + 1} dt &=& \int_{0}^{\arctan(x)} \frac{\tan^2(u) + 1}{\tan^2(u) + 1} du \\ &=& \int_{0}^{\arctan(x)} du \\ &=& \arctan(x) \end{eqnarray*}

これが今回の証明の第一段階です。恐らく既知の方は多いと思います。
数学コンクール論文賞で去年金賞を取った方は、$\arcsin(x)$の逆関数が$\sin(x)$だという解釈から論文を展開していたと思います。有用性が高そうな式ですね。

それはそうと、次は本題の$(\alpha)$まで一気に持っていきます。

\begin{equation} \int_{0}^{x} \frac{1}{t^2 + 1} dt \end{equation} 先ほどの$u$とは関係なく、$t = \frac{e^{u}-e^{-u}}{2}$ とおく。
($\sinh(x)$をご存知の方は遠回りをすみません。)
$t = 0$ の時 $u = 0$ であり、$t = x$ のとき、 \begin{eqnarray*} 2x &=& e^{u} - e^{-u} \\ 0 &=& e^{u} - 2x - e^{-u} \\ 0 &=& (e^{u})^2 - 2xe^{u} - 1 \end{eqnarray*} 2次方程式の解の公式より、 \begin{equation} e^u = x \pm \sqrt{x^2 + 1} \end{equation} $e^u > 0$より、 \begin{eqnarray*} e^u &=& x + \sqrt{x^2 + 1} \\ u &=& \ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right) \end{eqnarray*} よって \begin{equation} \begin{cases} u : 0 \to \ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right) \\ dt = \frac{e^{u} + e^{-u}}{2} du \end{cases} \end{equation} また$t^2 + 1$を計算すると \begin{eqnarray*} t^2 + 1 &=& \frac{(e^{u})^2 - 2 + (e^{-u})^2}{4} + 1 \\ &=& \frac{(e^{u})^2 + 2 + (e^{-u})^2}{4} \\ &=& \left(\frac{e^{u} + e^{-u}}{2}\right)^2 \end{eqnarray*} よって、 \begin{eqnarray*} && \int_{0}^{x} \frac{1}{t^2 + 1} dt \\ &=& \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)} \left(\frac{2}{e^{u} + e^{-u}}\right)^2 \frac{e^{u} + e^{-u}}{2} du \\ &=& \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)} \frac{2}{e^{u} + e^{-u}} du \end{eqnarray*} また、先ほど示したコーシー・シュワルツの不等式の変形から、$x \geqq 0$ の時 \begin{equation} \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)} \frac{2}{e^{u} + e^{-u}} du \geqq \frac{\ \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}{\displaystyle \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}\frac{e^{u} + e^{-u}}{2} du} \end{equation}

ここであえてそのまま積分せず、テイラー展開をします。

\begin{eqnarray*} && \frac{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}{\displaystyle \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}\frac{e^{u} + e^{-u}}{2} du} \\ &=& \frac{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}{\displaystyle \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)} \frac{\sum_{n=0}^{\infty} \frac{u^n}{n!} + \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-u)^n}{n!}}{2}}\\ &=& \frac{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}{\displaystyle \int_{0}^{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)} \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \frac{u^{2n}}{(2n)!}} \\ &=& \frac{\ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right)}{\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \frac{\left( \ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right) \right)^{2n+1}}{(2n+1)!}} \\ &=& \frac{1}{\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \frac{\left( \ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right) \right)^{2n-1}}{(2n+1)!}} \end{eqnarray*} よって、$x \geqq 0$ で \begin{equation} \arctan(x) \geqq \frac{1}{\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \frac{\left( \ln \left(x + \sqrt{x^2 + 1} \right) \right)^{2n-1}}{(2n+1)!}} \end{equation}

最初にも書きましたが、$x \leqq 0$ のときは不等号が逆向きになります。 これで求まりました。
この$\arctan(x)$にテイラー展開を代入したりするとおもしろそうですね。また、シグマが存在するので、さらにコーシーシュワルツを使ってみるのも面白そうです。
あとは皆さんでいじってみてください。
それでは、お疲れしました。

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