プロローグ
どうも、安田です。
私は現在数列$Y$と名付けた数列について研究しています。この数列は難解で、初めて研究を始めた一年前からずっと解けません。
しかし、解けない問題というのは、現在知り得る解法では解けない問題とも言えますので、新たな解法の発見に非常に役立ちます
今回は数列$Y$を考察する際に用いた分数化という方法について掘り下げます。
数列$Y$で分数化を使った記事
考察
簡単な概要と特徴
分数化というのはその名の通り数列を分数へと分ける解法です。つまり
\begin{equation}
A_n = \frac{Q_n}{P_n}
\end{equation}
というような変形をすることです。この変形は漸化式が多項式の分数や多項式の形になっているものに対して非常に良い働きをするのですが、その理由は以下の通りです(2020年論文賞では数列$Y$についての論文を書いたのですが、その論文のままの文章です)。
分数化は分母$\{P_n\}$と分子$\{Q_n\}$の次数の和$N$を考えた場合, $\frac{Q_n}{P_n}$の$N$は0であるため, 元の数列$\{A_n\}$の次数はすべて0となるから, 全ての多項式分の多項式の$N$の値は$0$となる. すなわち, 約分($p_n$を分子分母にかける事)をしても分子分母$N$のが一致する. よって, $\{P_n\}, \{Q_n\}$の漸化式はそれぞれ同じ$N$で構成される事が分かる.
これが何を意味するかというと、$P_{n+1}$と$Q_{n+1}$で構成される次数が一定の多項式に漸化式を代入して$P_n, Q_n$で表した場合、これらの次数も一定となるという意味を持ちます。
何が凄いかという事は次のセクションで書きます。
実用例
分数化はどのように使えるのかをここで例として示します。数列$Y$で分数化を使った記事であげた実例より複雑なものとして、次の数列について考えます。
\begin{equation}
\begin{cases}
a_{n+1} = \displaystyle \frac{a_n^3 + 3a_n}{3a_n^2 + 1} \\
a_1 = 2
\end{cases}
\end{equation}
この数列は分数化以外に解く方法があるのでしょうか。これも気になりますが、今回は分数化で解きます。
\begin{equation}
\begin{cases}
a_n = \displaystyle \frac{q_n}{p_n} \\
p_1 = 1, q_1 = 2
\end{cases}
\end{equation}
を$\{p_n\}, \{q_n\}$の定義とし、約分の無いものとする。この時、$\{a_n\}$の漸化式に代入すると、
\begin{eqnarray*}
\frac{q_{n+1}}{p_{n+1}} &=& \displaystyle \frac{\left(\frac{q_n}{p_n}\right)^2 + 3\frac{q_n}{p_n}}{3\left(\frac{q_n}{p_n}\right)^2 + 1} \\
\frac{q_{n+1}}{p_{n+1}} &=& \displaystyle \frac{q_n^3 + 3p_n^2q_n}{3p_nq_n^2 + p_n^3}
\end{eqnarray*}
であるので、
\begin{equation}
\begin{cases}
p_{n+1} = 3p_nq_n^2 + p_n^3 \\
q_{n+1} = q_n^3 + 3p_n^2q_n
\end{cases}
\end{equation}
である。ここでこれらの漸化式の和と差を取ると、
\begin{eqnarray*}
q_{n+1} + p_{n+1} &=& q_n^3 + 3p_nq_n^2 + 3p_n^2q_n + p_n^3 \\
q_{n+1} + p_{n+1} &=& (q_n + p_n)^3 \\
\therefore q_n + p_n &=& \displaystyle (q_1 + p_1)^{3^{n-1}} \\
&=& \displaystyle 3^{3^{n-1}}
\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}
q_{n+1} - p_{n+1} &=& q_n^3 - 3p_nq_n^2 + 3p_n^2q_n - p_n^3 \\
q_{n+1} - p_{n+1} &=& (q_n - p_n)^3 \\
\therefore q_n - p_n &=& \displaystyle (q_1 - p_1)^{3^{n-1}} \\
&=& \displaystyle 1
\end{eqnarray*}
となる。これらの和と差をとることで
\begin{equation}
\begin{cases}
p_{n+1} = \frac{1}{2} \left( 3^{3^{n-1}} - 1 \right) \\
q_{n+1} = \frac{1}{2} \left( 3^{3^{n-1}} + 1 \right)
\end{cases}
\end{equation}
である。よって
\begin{equation}
a_n = \displaystyle \frac{ 3^{3^{n-1}} + 1 }{ 3^{3^{n-1}} - 1 }
\end{equation}
このような感じで解くことが出来ます。これで「次数の一致」という強みが分かりやすくなったと思います。
分子分母単体への注目
少し長い記事になりましたが、もう少し続けます。
先ほどのセクションで求めた結論を使います。論文賞では$\{p_n\}$について考えたので、今回は$\{q_n\}$について考える事とします。
まず、$\{q_n\}$のみの漸化式を算出します。
$q_{n+1}$側の漸化式から
\begin{eqnarray*}
q_{n+1} &=& q_n^3 + 3p_n^2q_n \\
p_n^2 &=& \frac{q_{n+1} - q_n^3}{3q_n}
\end{eqnarray*}
である。これを$p_{n+1}$側の漸化式を2乗したものに代入する。
\begin{eqnarray*}
p_{n+1} &=& 3p_nq_n^2 + p_n^3 \\
p_{n+1}^2 &=& p_n^6 + 6p_n^4q_n^2 + 9p_n^2q_n^4 \\
\frac{q_{n+2} - q_{n+1}^3}{3q_{n+1}} &=& \left( \frac{q_{n+1} - q_n^3}{3q_n} \right)^3 + q_n^2 \left(\frac{q_{n+1} - q_n^3}{3q_n}\right)^2 + q_n^4 \cdot \frac{q_{n+1} - q_n^3}{3q_n}
\end{eqnarray*}
(ここの途中計算は省きます)
\begin{equation}
q_{n+2} = \frac{q_{n+1}^4}{9q_n^3} + \frac{8}{3} q_{n+1}^3 + \frac{16}{3} q_{n+1}^2q_n^3 - \frac{64}{9}q_{n+1}q_n^6
\end{equation}
また、
\begin{equation}
q_2 = q_1^3 + 3p_1^2q_1 = 14
\end{equation}
このような結果となりました。以上の事の逆に考えると、下のような事が言えます。
\begin{equation}
\begin{cases}
q_{n+2} = \frac{q_{n+1}^4}{9q_n^3} + \frac{8}{3} q_{n+1}^3 + \frac{16}{3} q_{n+1}^2q_n^3 - \frac{64}{9}q_{n+1}q_n^6 \\
q_1 = 2, q_2 = 14
\end{cases}
\end{equation}
この解は
\begin{equation}
q_{n+1} = \frac{1}{2} \left( 3^{3^{n-1}} + 1 \right)
\end{equation}
である。
非常に難しい漸化式の解が分かりました。このように、分数化では限られた漸化式を一般項を求める事ができます。
長いので続きは次回に回します。
それでは、お疲れさまでした。
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