イェンセンの不等式(限定的)と相加相乗平均

更新日時:2020/11/07

数学関数不等式相加相乗平均イェンセンの不等式

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プロローグ

どうも、安田です。
最近適当に式変形していたら、イェンセンの不等式の一種に当たるものの証明ができたので、今回はその紹介をします。(イェンセンの不等式という名称を教えて下さった方、ありがとうございます。)
ついでに相加相乗平均の関係も証明します。

イェンセンの不等式$(\lambda_k = \frac{1}{n})$

紹介

今回見つけたイェンセンの不等式は、$(\lambda_k = \frac{1}{n})$の場合、すなわち以下の式です。

(1)$f''(x) > 0$ のとき
\begin{equation} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n}f(x_k) \geqq f\left(\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}x_k\right) \end{equation}
(2)$f''(x) < 0$ のとき
\begin{equation} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n}f(x_k) \leqq f\left(\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}x_k\right) \end{equation}
以上の等号成立条件は全ての $x_k$ が一致すること。

普通のイェンセンの不等式は、左辺の $f(x_k)$ または右辺の $x_k$ の係数が $\frac{1}{n}$ ではなく、$\lambda_k$になっているものです(ただし$\lambda_k$の総和は $1$ )。

証明

それでは証明をします。今回の証明方法はちょっと特殊かもしれません。

(共通)
$x_k$ を以下の式を満たすものとする。 \begin{equation} \sum_{k=1}^{n} x_k = P = Const. \tag{i} \end{equation} この時 \begin{equation} S = \sum_{k=1}^{n} f(x_k) \end{equation} を考える。
まず、異なる $a, b$ について $x_a, x_b$ の関係は$(i)$から定数$A$を用いて \begin{equation} x_b = - x_a + A \tag{ii} \end{equation} と表す事ができる。ここで $S$ を $x_a$ で微分すると$(ii)$を用いれば \begin{eqnarray*} \frac{dS}{dx_a} &=& f'(x_a) + \sum_{k \neq a} \frac{d}{dx_a} f(x_k) \\ &=& f'(x_a) - \sum_{k \neq a} f'(x_k) \end{eqnarray*} となる。すなわち \begin{eqnarray*} &&\frac{dS}{dx_a} = 0 \\ &\Longleftrightarrow& f'(x_a) = \sum_{k \neq a} f'(x_k) \\ &\Longleftrightarrow& 2f'(x_a) = \sum_{k = 1}^{n} f'(x_k) \end{eqnarray*} よって、$S$ が極地を取る時は、$a$ に $a$ と $b$ を代入したものを比較して \[ f'(x_a) = f'(x_b) \] の時である。(1)(2)のどちらの場合でも$f'(x)$は単調な変化をするので、上の式は \[ x_a = x_b \] と同値である。よって $S$ の極致は$x_k = \frac{P}{n}$ のときすなわち \begin{equation} S = n f\left(\frac{P}{n}\right) \end{equation}

(1)のとき
\[ \frac{dS}{dx_a} = f'(x_a) - \sum_{k \neq a} f'(x_k) \] について考える。$x_a$ が増加すれば $x_k\ (k \neq a)$ は減少する。また、$f'(x)$ は単調増加する。 以上の事から$\frac{dS}{dx_a}$ は $x_a$ に対して単調増加する事が分かり、符号の変化は $- \to 0 \to +$ となる事が分かる。
よって $S$ は極小値をただ一つだけ持つため、$S$ の極値は $S$ の最小値である。

(2)のとき
(1)と同様に考えると、$\frac{dS}{dx_a}$ は $x_a$ に対して単調減少であるため、符号の変化は $+ \to 0 \to -$ となる事が分かる。
よって、$S$ は極大値をただ一つだけ持つため、$S$ の極値は $S$ の最大値である。

これらをまとめて、
(1)$f''(x) > 0$ のとき
\begin{equation} \sum_{k=1}^{n}f(x_k) \geqq n f\left(\frac{P}{n}\right) \end{equation}
(2)$f''(x) < 0$ のとき
\begin{equation} \sum_{k=1}^{n}f(x_k) \leqq n f\left(\frac{P}{n}\right) \end{equation}

上の式は命題と同値であるので証明完了です。
まあ不等式の証明に微分を使うのは主流かもしれませんが、多変数の不等式で微分を使うのはなかなかないのではないでしょうか。いやもしかしたらよくやるのかもしれませんが、私は今回が初めてでした。

相加相乗平均の関係を導く

上で導いた不等式を用いればささっと証明出来ます。 \[ f(x) = log(x) \] とします。 \[ f''(x) = -\frac{1}{x^2} < 0 \] なので(2)の場合に該当します。あとはこれを代入すれば相加相乗平均の関係を導けます。

\begin{eqnarray*} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n}f(x_k) &\leqq& f\left(\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}x_k\right) \\ \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n}log(x_k) &\leqq& \log\left(\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n}x_k \right) \\ \frac{1}{n} \log \left( \prod_{k=1}^{n} \right) &\leqq& \log\left(\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} x_k \right) \\ \sqrt[n]{\prod_{k=1}^{n} x_k} &\leqq& \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} x_k \end{eqnarray*}

というわけで、式変形だけで相加相乗平均の関係を証明する事が出来ました。

以上、イェンセンの不等式(限定的)と相加相乗平均についてでした。次は一般的なイェンセンの不等式を微分で証明できないか試してみます。
それでは、お疲れさまでした。

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