【数列】数列Yとの闘い p7:近似の補正【シリーズ記事】

更新日時:2021/06/30

数学数列数列Yシリーズ記事

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プロローグ

どうも、安田です。今回は数列$\{Y_n\}$の続きです。

この記事はシリーズ記事です。是非p1からご覧ください。
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問題:数列$\{Y_n\}$

このシリーズでの最終目的は、以下の数列の一般項を求める事です。性質などの発見もサブの目的として取り扱っていきます。

数列$\{Y_n\}$を以下と定義する。 \begin{equation} \begin{cases} Y_1 = 2 \\ Y_{n+1} = Y_n + \frac{1}{Y_n} \end{cases} \end{equation}

考察

微分近似との差の発散・収束

PART4では、数列$Y$を \[ Y_n \simeq \sqrt{2n + C} \] と近似しました。ここで疑問になるのが、$n \to \infty$ において、$C$がどのような定数になるか、または$C$も発散するのかということがありました。 (発散する場合は、$n$に関する項がまだ足りないということを意味します。)

今回は、その$C$の部分について考察します。

まずは準備として、$C$の部分を数列と見なして変形します。

\begin{align} Y_{n+1} &= Y_n + \frac{1}{Y_n} \\ Y_{n+1}^2 &= Y_n^2 + 2 + \frac{1}{Y_n^2} \end{align} ここで、 \[ Y_n^2 = 2n + y_n \] とすると \[ y_{n+1} = y_n + \frac{1}{y_n + 2n} \] である。

ここで、収束するか発散するかを決めないで議論するのは難しいので、どちらかに予想してそれを目標に証明を考えます。

とても収束しそうに見えますが、発散すると予想して解くことにします。最近論理記号について教わったため、発散する条件を書いてみます。$y_n$が単調増加であることを用いると、次のように発散条件がかけます。

\[ \exists c \gt 0, \forall n \in \mathbb{N}, \exists k \in \mathbb{N}, y_{n+k} - y_n \gt c \]

論理記号がわからない人向けに解説すると、どれだけ大きい$n$に対してもその$k$項後は一定量以上増加するということです。このとき、その一定量がnに寄らないように計算します。

それでは、これを示していきます。まず、$y_{n+k}$が$k$に依存した上限を持つことを調べます。

\begin{equation} y_{n+k} = y_n + \sum_{l=0}^{k-1} \frac{1}{y_{n+l} + 2(n+l)} \end{equation} ここで$y_n$は単調増加より \[ y_{n+l} +2(n+l) \gt y_n + 2n \] なので \begin{align} y_{n+k} &\lt y_n + \sum_{l=0}^{k-1} \frac{1}{y_n + 2n} \\ &= y_n + \frac{k}{y_n + 2n} \end{align} であるが、ここで$k=n$のとき \begin{align} y_{2n} &\lt y_n + \frac{1}{\frac{y_n}{n} + 2} \\ &\lt y_n + \frac{1}{2} \end{align}

このように、$y_{2n} - y_n$ に上限があることがわかりました。ますます収束しそうに見えますが、これにより以下の補題を示すことができ、これが証明に繋がります。

補題 \[ \frac{y_{2n}}{n} \lt \frac{\log_2 24}{2} \]
証明 \[ 2n = 2^s - t \quad (s, t \in \mathbb{N}, t \lt n) \] とする。このとき、$y_{2n}$は単調増加より \[ y_{2n} \leq y_{2^s} \lt y_{2^{s-1}} + \frac{1}{2} \lt \cdots \lt y_1 + \frac{s-1}{2} \] ここで \[ s = \log_2(2n + t) \lt \log_2(3n) \] より \[ y_{2n} \lt 2 + \frac{\log_2(3n) - 1}{2} \lt \frac{1}{2}\log_2(24n) \] である。ここから \[ \frac{y_{2n}}{n} = \frac{\log_2(24n)}{2n} \lt \frac{\log_2(24)}{2} \] がわかる。
$l \leq k$ とすると、$y_n$が単調増加であることより \[ y_{n+l} +2(n+l) \lt y_{n+k} + 2(n+k) \] なので \begin{align} y_{n+k} &\gt y_n + \sum_{l=0}^{k-1} \frac{1}{y_{n+k}+2(n+k)} \\ &= y_n + \frac{k}{y_{n+k}+2(n+k)} \end{align} であるが、ここで$k=n$のとき \[ y_{2n} \gt y_n + \frac{n}{y_{2n}+4n} \gt y_n + \frac{1}{\frac{y_{2n}}{n} + 4} \gt y_n + \frac{1}{\frac{\log_2 24}{2} + 4} \] より、$y_n$は発散する。

これで発散することが確認できました。これにより、任意の定数$C$に対し \[ (Y_n)^2 - (2n + C) \] は発散する(つまり$n$についての項が不十分である)ことが導けました。

追記(2021/07/06)

以前は、上の数式を \[ Y_n - \sqrt{2n+C} \] としていましたが、これは収束することが発見されたため、訂正しました。

補正項

それでは、不十分な項を追加してみます。
上のセクションから、$\log(n)$に比例して、一定量増加していくという予想を立てることができます。 ここで、以下のように予想を立ててみます。 \[ Y_n \simeq \sqrt{2n + a\log(n) + b} \] ここで、$n=1, 2$の時に値があうように定数を定めると以下のようになります。

\[ Y_n \simeq \sqrt{2n + \frac{1}{4}\log_2(n) + 2} \]

実はこの近似は非常に精度がよく、グラフで比較すると以下のようになります。

$n=6$ですら、誤差は$0.0075$ほどです。

今回はこのぐらいにしようと思います。上の近似が近似として成立する理由についての考察はまだ試してないので、いつかその方法を発見したら投稿しようと思います。

それでは、お疲れ様でした。

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※次回記事は投稿され次第、記事が表示されます。

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