プロローグ
どうも、安田です。
今回は級数についての記事です。最近差分について考えていたのですが、面白い級数を発見したため、紹介したいと思います。
シフト級数
構想
まずは差分の定義から振り返ります。
これを言い換えれば
です。これに$x+1$をさらに代入して \[ f(x+2) = \Delta^2 f(x) + 2\Delta f(x) + f(x) \] というように、$1$ずつシフトしていくことが分かります。これを繰り返していけば$f(x+n)$を$\Delta^k f(x)$の和で表せることが分かります。
次に、この逆の形、すなわち$\Delta^n f(x)$を$f(x+k)$の和で表すことを考えます。これは以下のように表されることが知られています。
これは一種のライプニッツルールであり、帰納法により証明することができます。
$f(x+n)$を$\Delta^k$で展開した式にさらに$\Delta$を$f(x+l)$で展開した式を代入することで、新たな式を生成することを考えます。
正確な考察
ここからは、細かく証明しながら考察していきます。まずは、$f(x+n)$を展開します。
$n=1$のとき \[ f(x+1) = \Delta f(x) + f(x) \] $n=s$において成立していると仮定し、$n=s+1$について考察する。まず \[ f(x+s+1) = \Delta f(x + s) + f(x+s) \] であり、ここに展開した式を代入すれば \begin{align*} f(x+s+1) &= \sum_{k=0}^{s} {}_s \mathrm{C}_{k} \Delta^{k+1} f(x) +\sum_{k=0}^{s} {}_s \mathrm{C}_{k} \Delta^{k} f(x) \\ &= f(x) + \sum_{k=1}^{s} ({}_s \mathrm{C}_k + {}_s \mathrm{C}_{k-1})\Delta^k f(x) + f(x+s+1) \\ &= \sum_{k=0}^{s+1} {}_s \mathrm{C}_{k} \Delta^{k} f(x) \end{align*} より示された。
上でちょっとした飛躍をしましたが \[ {}_n \mathrm{C}_{m+1} + {}_n \mathrm{C}_m = {}_{n+1} \mathrm{C}_{m+1} \] は、$\mathrm{C}$ を階乗の形で表して計算することで簡単にもとまる等式です。
それでは、次はライプニッツルールを帰納法により示したいと思います。
$k=1$のとき \[ \Delta f(x) = f(x+1) - f(x) \] $k=t$で成立すると仮定して$k=t+1$について考察する。 \begin{align*} \Delta^{t+1} f(x) &= \Delta \Delta^t f(x) \\ &= \sum_{l=0}^{t} \Delta \left( (-1)^{t+l} {}_t \mathrm{C}_l f(x+l) \right) \\ &= \sum_{l=0}^{t} (-1)^{t+l} {}_t \mathrm{C}_l \left( f(x+l+1) - f(x+l) \right) \\ &= (-1)^{t+1} f(x) + \sum_{l=1}^{t} (-1)^{k+l+1} ({}_t \mathrm{C}_l + {}_t \mathrm{C}_{l-1}) f(x+l) + f(x+t+1) \\ &= \sum_{l=0}^{t+1} (-1)^{t+l+1} {}_{t+1} \mathrm{C}_l f(x+l) \end{align*} より示された。
これも先ほど用いた$\mathrm{C}$に関する等式を使っています。
以上により2つの逆向きの変換が完成しましたので、2つ目の式を最初に式へと代入します。
このように、関数をシフトさせるような級数ができました。これは同様の証明方法を用いれば、一般的に以下のことがいえます。
このように級数を求めることができました。私はこれをシフト級数と呼ぶことにしました。
活用例
というわけで、活用方法について考えていきます。
まずは、係数比較です。シフト級数は$f$に連続や微分可能といった条件が一切ないですので、$f(x+l)$の係数が$l \neq n$である$l$に対しては0、$l=n$である$l$に対しては1となります。すなわち以下のことが求まります。
※上は$\mathrm{C}$を階乗の形に変形しています。
ほかにも、$p=1, x=0, n \to \infty, f:\text{微分可能}$としてみると面白いかもしれません。
このように、いろいろ変形することにより、新しい式を導くことに使えそうです。
類似の級数
ここでは、シフト級数に似た他の級数も紹介します。
逆シフト級数
逆シフト級数は、以下のようなものです。
同じように見えますが、$-1$の指数の$k+l$の部分が$n+k$となっています。
これだけではどこが逆なのかわからないと思いますので、この証明を軽く載せます。
※上の式での$f$と証明内での$f$は別物です。
という感じで、どちらの式にどちらの式を代入するかということに関して逆となっているため、このような名称としました。ここで、任意の関数$g$に対して
\[
\Delta^k f(x)=g(x+k)
\]
を満たすような$f$が存在するかどうかという話ですが、僕にはその証明はわからないので、ここではできません。しかし、おそらく${}_2n \mathrm{C}_n$をシグマで表す方法などを知っていると、係数が$l\neq n$で$1$、$l = n$で$0$という部分から証明ができると思います。
証明を思いついた方はぜひコメントに残してください。
多次元シフト級数
多次元シフト級数は、シグマの数が増えたシフト級数です。
ここで使うものは以下の3つです。
まずは、(3)に(3)を複数回適応した式させます。なお、$n$は$k_1$に置き換えておきます。
美しいですね。これをさらに(2)に代入します。
最後に(1)を代入することで完成します。
このようになります。最後に式を整えます。
このように求めることができました。多項定理を思い浮かばせるような美しい式になりました。なお、ここでも$\mathrm{C}$は階乗の形に展開しています。
以上で終わりにしたいと思います。それでは、お疲れ様でした。

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